自分の目で確認出来るよう近隣で穫れた素材を使いたい。そうすればお客様に自信をもって『安心できる素材』って伝えられます。全てはお客様の立場に立って考えたいです。




藤沢市の住宅街にある「KONDITOREI STERN(コンディトライ シュテルン)」は地元の素材を使用した洋菓子が豊富にそろう洋菓子店です。店内中央には大きな商品棚が置かれていて、ぐるっと一周してお菓子を選べます。驚くのはその焼き菓子の種類です。約80種類ほど並んでいるとか。オーナーシェフの渡部 直也(わたなべ なおや)さんにまずはこの焼き菓子のお話を伺います。「うちは住宅地にあるので毎日食べて頂けるようなおやつ菓子を作ろうと決めています。選ぶ楽しみやわくわく感を味わっていただきたくて、お客様が選びやすいようにと商品棚を置きました」と渡部さん。以前はこの大きな商品棚はなく、店内の色々な場所にギフト用中心の焼き菓子を並べていたそうですが、おやつ用の焼き菓子を一個から買いに来てもらえるようにと一か所にまとめる大きな商品棚を作ったのだとか。「女性のお客様でも見やすいようにデザイナーさんに相談しながら棚の高さを決めました。一周したらすべてのお菓子を見ることができるように2段にしました」。この棚が出来てから焼き菓子を一個だけ買いに来てくれるお客様がとっても増えたのだそう。「80種類もあるのでどれにしようか迷われるのか、厨房で作業をしている私を呼んで下さり、どのお菓子がいいかと相談されることも多くあります。そんな時はどんな人がどんな場面で食べられるお菓子なのかを伺い、お勧めのお菓子をお伝えするようにしています」と渡部さん。ケーキ作りの最中でも出来る限り手を止め、お客様とのコミュニケーションを大切にされているのだそうで、お客様から呼んで話しかけて頂くことをありがたいですと言っていました。






お客様がいつ来ても楽しめるように

「生ケーキはお客様に季節感を感じてもらえるように定期的に新商品を出すようにしています。定番のショートケーキやチーズケーキもその時のトレンドをみて少しアレンジを加えたりします。私自身同じものばかり作るのは飽きてしまうんです。お客様も同じですよね」と笑顔を見せてくれた渡部さん。「自分が食べたいとか美味しいと思ったものを作るようにしています。生ケーキも、焼き菓子も自分が納得する味になるまでとことん試作をします」農家さんや菓子材料メーカーさんが新しい材料を提案してくれた時、その素材インスピレーションを感じたら新商品作りの始まりなのだそうです。新しい素材を使う時は今あるお菓子にその素材を使うのではなく、素材に合う最適なお菓子を一から作るのが渡部さんのこだわりなのだとか。それではインスピレーションを感じて試作を始め、納得するまで2か月もかかったお菓子をご紹介します。



2か月目の成功は偶然?必然?

地元、神奈川県藤沢市産の「トマト」がたっぷり使われている「湘南菓族 野菜(ベジ)パイ とまと」をご紹介します。渡部さんが「トマトが嫌いな人には絶対に召し上がっていただけないほど、トマトの味がしっかりします」と言うとおり、トマトの味と香りをしっかりと感じるサクサクと軽い食感のパイ菓子です。一口サイズでつまめるので場所を選ばず気軽に食べられるのがうれしいです。トマトがたっぷりと入っているのでお子様にはお菓子で栄養をとっていただけます。大人のお客様からはお酒のおつまみにもぴったりと好評です。実はこの「湘南菓族 野菜(ベジ)パイ とまと」、完成するまでに2か月もかかった渡部さん渾身のひと品です。トマトの酸性であることから他の材料の性質と合わず、さっくりとしたパイに焼き上げるのに苦労したのだそう。「私自身、よく諦めずに作り続けたなって思ってるんです」と渡部さんは笑います。完成したのはお菓子を作ることに関して色々知識があったからこそ、それまでに試さなかった作り方で焼き上げた時でした。温度管理や湿度管理なども関係して出来上がったというから驚きです。お菓子作りってとっても奥が深いものですね。






トマトでお菓子を作ったきっかけ

KONODITOREI STERN(シュテルン)で地産素材を使用するきっかけは農家さんから農産物の廃棄率を聞いたことがきっかけです。「形や大きさが規格外なだけで廃棄されるなんてもったいないと思っていました。ある時、農家さんに直接トマトを買いに行ったんです。そうしたら農家さんが『これは規格外だから廃棄しなくてはいけないからあげるよ、実はこっちの方が味はいいんだよ、食べてごらん』とトマトをくださったんです。それを食べてみると本当に美味しい!すぐに農家さんに買い取りたいと申し出ました」と渡部さんが教えてくれました。果物も乳製品も、一次生産してくれる農家さんがいなかったらケーキ屋は成り立たない。なので農家さんにも喜んでいただけるようきちんと利益が出るよう価格を決めてもらったそうです。「地元で取れた素材を使用するとお客様、特にお子様がいるお客様はとても喜んでくださいます。やはり安心するんだそうです。お客様が喜んでくださるなら収穫時期だけではなく一年中地元のトマトを使いたくて、収穫時期に一年分まとめて買ってピューレにして保管しています」とのこと。渡部さんは自身が作ったお菓子で農家の方もお客様もみなさんに喜ばれることがうれしく、ありがたいと言っていました。



湘南ゴールドの焼き菓子は選べる二つのバリエーション

神奈川県産のみかん「湘南ゴールド」がたっぷり入ったパウンドケーキ「湘南ゴールド」をご紹介します。果物の名前がそのままお菓子の名前になっています。コンポート(果物の皮や実を水と砂糖などで煮ること)した湘南ゴールドを細かく刻み生地に加えて焼き上げてあります。「湘南ゴールドの爽やかな酸味と共に鼻に抜ける香りを残したいと思って作りました。パウンド形タイプとカットしてあるピースのタイプでは、製法や材料の配合が違います」と渡部さん。渡部さんはお客様がこのお菓子を食べることを想像して「パウンド形タイプはしっとりずっしり、ピースタイプはふんわり柔らかなものを求めていらっしゃるのではないか」と思い二種類のバリエーションにしたそうです。渡部さんは「どっちが好きかな」と言っていましたが、私はどっちかなんて選べません!どちらも開封したらパーッと広がる香りが呑み込んでも鼻孔に残ります。爽やかな香りが印象的なでリピート買い決定!と思ったお菓子です。






パッケージがかわいい藤沢名物「カワセミくんサブレ」

駅のお土産売り場に売られていた「カワセミくんサブレ」。ザクザクとした食感とパッケージの可愛さでお土産品に人気です。このサブレ、シュテルンの商品だったという事で驚きました。神奈川県相模原市産の米を挽いた「米粉」で作られているとのこと。「ザクザクとしているけれど口の中の水分を奪われないように小麦粉や品種の違う米粉などで試作して作りました。その結果納得のいく食感を作ってくれたのはこの米粉だったんです」と渡部さんが言うとおり、ザクッザクッとした歯ごたえを感じた後に口の中で滑らかにまとまります。口の中に広がる優しい甘みは多くの方が好きな味です。パッケージのカワセミくんは藤沢市のマスコットキャラクターです。カワセミは藤沢市の指定の鳥なのだそう。県外から観光で訪れた方にも、地元の方にはどこかに出かけられるときにもお勧めです。






お菓子のことならなんでも相談してほしい

渡部さんは「お客様からのリクエストにはなるべく答えたいし、ご相談にのって差し上げたいと思っています」といいます。お菓子のこと、洋菓子・和菓子問わず甘いもののことで相談やリクエストがあれば「ちょっとシュテルンに聞いてみよう!」って思ってもらえるお店になりたいのだそう。インタビューの随所で話される、お客様からのご相談への対応や、お客様のリクエストのために努力すること、お客様の立場に立った考え方など、お客様目線のストーリーをお聞きするとすでに渡部さんの目指しているお店なのではないかと思いました。その気持ちを渡部さんに伝えてみました。「まだまだです。もっとお客様に頼って頂けるようなそんなお店を目指しています」と渡部さん。一つ渡部さんとお客様とのコミュニケーションのお話をご紹介します。



お客様のリクエスト「また作って!」

「うちにはモンブランが二種類あるんです。もともとは定番のモンブランでロールケーキの上に栗餡を絞った昔なつかしいようなタイプだけだったんですが、期間限定で『季節のモンブラン』を出したんです」と渡部さん。「期間限定で販売した「季節のモンブラン」には数量限定でしか手に入らなかったフランスの栗を使っていました。ほっこりした食感と栗の香りをしっかりと感じる栗だったので、味がダイレクトに出るようにモンブランに仕立てました」。お客様からはとっても好評だったのですが、栗は数量限定だったため追加の入手が出来ず、この商品は終売となりました。ところがお客様から「あの季節のモンブラン終わったんですか?おいしかったのに」や「またあのモンブランが食べたい」というリクエストが多く入ったそう。栗が入手出来ないのでどうしたものかと頭を悩ませた渡部さんは色々な産地や品種の栗を入手し、ブレンドしながら試作を重ねたそうです。出来上がったペーストはフランス産のふっくらほっこりした食感とイタリア産の香り高い栗を独自の配合で合わせたもの。このペーストを使ってまた「季節のモンブラン」を発売できることになったのです。「名前は『季節の・・・』ですけど通年販売です。お客様が喜んでくださったので本当にうれしかったです。この仕事に出会えてよかったです」と言っていました。






材料は近くで育てられたものをそろえたい

「自分でハードルあげちゃうようなことを言いますが、今後は近隣県だけで原材料が完結するような商品をたくさん置きたいと思っています。理想は8割です」と渡部さん。どこでどのように育てられた素材なのかを自分の目で確認できるように近隣で穫れた素材が良いのだとか。

「自分の目で確認をすればお客様に自信をもって『安心できる素材です』って伝えられます。全てのことはお客様の立場に立って考えたいです」と話した時の真剣な顔が印象的でした。近隣県の美味しい素材で作られた美味しいお菓子でこれからもお客様に喜んでいただけることでしょう。


(取材・文 まちおやつプロジェクトメンバー)

 

店名 KONDITOREI STERN(コンディトライ シュテルン)
住所 神奈川県藤沢市村岡東2-15-3 
電話 0466-26-0727
最寄駅 JR東日本・小田急電鉄・江ノ島電鉄 藤沢駅
定休日 月曜日
営業時間 9:30~20:00
駐車場 あり 5台
イートイン あり 12席
カード 不可
お取り寄せ お電話にてお問い合わせください
ホームページ http://www.stern-shonan.com/index.html

 

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