水戸の地に開業して18年。地元産素材も積極的に使用し、ここ数年は特に、地産地消のギフト菓子に注力。地元のお客様に認められる、オリジナリティあるお店づくりを目指しています。

パティスリーKOSAIの小齊俊史シェフ



茨城県ならではの栗のお菓子も、オリジナリティを追求

こんにちは、スイーツジャーナリストの平岩理緒です。日本各地の菓子店による、スイーツで地域を盛り上げる取り組みをご紹介するこのコラム。第七弾は茨城県・水戸市の「パティスリーKOSAI」です。住宅街の中にある本店は、2000年10月15日に開業。茨城県東茨城郡の「イオンタウン水戸南SC」内にも支店があります。
オーナーの小齊俊史(こさいとしふみ)シェフは、地元で菓子職人としての修業を始め、若くして地元のレストラングループの洋菓子工場の責任者を任され、11年間に渡り勤務。その後、首都圏の菓子店での修業を経て、自店「パティスリーKOSAI」をオープンされました。「地域で一番美味しい」と言われるお店を目指し、茨城県内の特徴ある産品との出会いをはじめ、様々な人との繋がりから刺激を受けつつ、常にパワフルに、色々なことに挑戦されています。
秋に始まる人気商品と言えば、「岩間栗のモンブラン」。フリルのドレスを思わせるようなエレガントな絞り方の栗のクリームが、ショーケースの中でもひときわ映えています。



秋の人気商品、茨城県笠間市の岩間地区産の栗を使った「岩間栗のモンブラン」(580円 税込み)


日本一の栗の生産量を誇る茨城県。その中でも、「笠間栗」などはメジャーな産地の一つですが、小齊シェフはもともと、茨城県西茨城郡に位置していた「岩間町」産の栗を使っていらっしゃいました。2006年、この地域が合併により茨城県笠間市になってからも、こだわってずっと使い続け、商品名にも「岩間栗」の名を残しているそうです。
モンブランの土台はココナッツ入りのメレンゲで、水分を吸うことを防ぐため、ブラックチョコレートで薄くコーティング。上に絞られたクリームは、生クリームとカスタードを混ぜ、さらにサワークリームと削ったオレンジの皮で爽やかさを加えています。中には、胡桃と岩間栗の渋皮煮を忍ばせたカスタードクリームと、ほんのり甘い生クリーム入り。モンブランクリームには、岩間栗ペーストを主体に、少量のバターもブレンド。繊細な栗の風味を生かすため、香りの強いお酒ではなく、ほんのり上品な香りの和栗のリキュールを使用しています。
夏場はつくらずお休みしていて、2018年は例年より早めに、8月下旬から発売したそう。オープンから半年後ほどには販売し始めたという、ロングセラーの人気商品です。

少しずつマイナーチェンジは続けていて、この、可愛らしい絞り方に変えたのは数年前。粒々の渋皮が少し残っているため、以前に使っていた「小田巻」という道具だと、絞り口の穴が詰まってしまいがちだったそうですが、口金を変えたことで、裏ごしする必要もなくなり、栗の風味がよりしっかりと感じられます。
小齊シェフも、最初は時間がかかったそうですが、今や、1個絞るのに1分とかからないそうです。とはいえ、パーツも多く手が込んでいるため、手間隙のかかる一品ですが、デザインも含めて他にないオリジナリティあるモンブラン、魅力的ですね!
岩間栗を使った生菓子には、ホールケーキ「茨城栗のズコット」もあります。ドーム形のスフレチーズケーキの上に、岩間栗のクリームをモンブランのように絞り出し、チョコレートや渋皮煮でデコレーション。



ドーム状のスフレチーズケーキの上にモンブラン風の岩間栗クリームを絞った「茨城栗のズコット」(1080円 税込み)


ちなみに、こちらの商品名が「茨城栗」となっているのは、もともとこの品が、以前に、水戸駅隣接の駅ビル内に店舗があった際、遠方からのお客様にも茨城土産としてお勧めしたいという思いで開発されたものだからです。実際には、モンブランと同じく岩間栗を使用しています。



さつまいもや栗を使った、こだわりのギフト菓子やおやつ菓子

地元産の素材を使ったギフト菓子も、種類を増やしていらっしゃいます。中でも、「茨城の焼栗」と「芋スフレ」は、岩間栗と、茨城県産のさつまいもを使った焼き菓子ギフトとして、人気の品です。



「芋スフレ」は、単品でもギフト箱入りでも販売(8個入1,760円、12個入2,640円 税込み)


冷蔵販売をしている「芋スフレ」は、ヘーゼルナッツとシナモン入りシュトロイゼルの土台に、チーズスフレと、茨城県ひたちなか市産のさつまいも「紅あずま」のスイートポテトを重ねて焼き上げた、ふんわりしっとりの焼き菓子。茨城県つくば市近郊で採れた蜂蜜も使用しています。


「茨城の焼栗」は、可愛らしい栗の形をしていて、中には、岩間産の大粒の栗の渋皮煮がごろりと入っています。周りの生地にはアーモンドパウダーとイタリア産の焼栗ペーストを混ぜることで、より深いコクに。サワークリームや生クリームも入れて、爽やかな酸味やしっとり感もプラス。さらに、食べた後のすっきりとした切れ味を出すために、ダークのラム酒で風味付けをしています。焼き方にもこだわり、焼栗の香ばしさを表現するため、やや高温で表面にしっかり焼き色をつけ、サクッと歯切れよく芳ばしく焼き上げます。





「茨城の焼栗」の中に入っている渋皮栗は、モンブランの中に使っているのと同じで、岩間の栗専門店が加工した「衣栗(ころもぐり)」と呼ばれる物を使用。通常の栗の渋皮煮と比べて、中までしっかりとシロップが浸透していて栗のでんぷん質がα化されているため、焼き込んでも硬くならないのだそうです。しっとり、ほろっと柔らかで、生地の口どけとバランスのとれた食感になるよう配慮。細やかな試行錯誤を重ねて改良していった、「パティスリーKOSAI」自慢の品です。



伊勢神宮にお菓子を奉納した際の証書


実はこの2つのお菓子は、2013年に、茨城県を代表して、伊勢神宮への奉納品として選ばれた由緒正しい品なのです。奉納の儀式に参加された小齊シェフは、その際に改めて、地産地消の「正直なお菓子づくり」を神様に誓ったと言います。


さらに、さつまいもを使った商品として、今後、出していきたいと小齊シェフが話されるのが、さつまいもの皮をくり抜いて器にし、中身を詰めて焼き上げる「スイートポテト」です。



皮を器にした「スイートポテト」は量り売りで販売(100g 300円 税込み)


何だか、子どもの頃のおやつを思い出すような、ほっとする懐かしさ!
小齊シェフが師事された親方が、「シェ・リュイ」という東京・代官山の有名パティスリーご出身で、その店から継承された「スイートポテト」のイメージなのだそうです。
お店によっては、白餡と混ぜて和洋折衷のお菓子としてつくるところもありますが、「パティスリーKOSAI」では、茨城県産のさつまいもに、バターと生クリーム、卵黄と塩、そして、つくば市近郊で採れる蜂蜜とラム酒のみを入れ、リッチなフランス菓子風の製法でつくります。
「最近は逆に、こういうスイートポテトを見なくなったので、ならばつくろうかなと思って」という小齊シェフ。表面にも、卵黄と蜂蜜を混ぜて塗ってから焼き上げることで、香ばしく食欲をそそる焼き色をつけています。



地元産素材との出会い、人との出会いを大切に

他にも、地元産素材を使った特徴的な品の一つが、「茨城県産パプリカ&赤い果実ジャム」。水戸市内で栽培されている赤パプリカとの出会いから生まれたジャムです。



「茨城県産パプリカ&赤い果実ジャム」(486円 税込み)


「ごみ処理場の熱を利用してパプリカのハウス栽培を行っている農家さんで、食べてみたら、とても肉厚で、シャキシャキのみずみずしい食感に感激しました。このパプリカの爽やかな酸味に、赤スグリやカシス、フランボワーズといった赤いフルーツ類が合いそうだ、とイメージがわきました」という小齊シェフ。鴨や豚などの肉料理とも合わせてほしいと、バルサミコ酢や、ピンクペッパー、マルサラ酒を隠し味に、甘いだけではない奥行ある深い味わいに仕上げています。



「茨城の銘酒ジュレ」は、水戸市の明利酒類株式会社の「百年梅酒」と本醸造酒「副将軍」を使用。(各1個270円、10個入オリジナルギフトパッケージ3,100円 税込み)


新商品開発のきっかけとなるのは、素材との出会いだけとは限りません。
たとえば、2018年2月に水戸市内で開催された「第6回 世界チョコレートフェスティバル」で、コラボレーション商品としてデビューした「納豆ショコラ」。こちらに使用しているチョコレートは、南米のコロンビアでカカオ豆の栽培、加工から現地の方々と共に行っている「カカオハンター」こと、小方真弓さんが手掛けるブランド「CACAO HUNTERS」の「シエラネバダ」という、カカオ分64%のもの。小齊シェフは、小方さんの、カカオに対する深い思いに感銘を受け、茨城県に招いて講習会を企画開催されるなど、親交を深めていらっしゃいました。



「納豆ショコラ」には、コロンビア「CACAO HUNTERS」の「シエラネバダ」使用。(100g 1,404円 税込み)


フリーズドライの納豆に焦がし醤油で風味をつけ、さらにキャラメリゼしてから、チョコレートがけにしています。フリーズドライ納豆自体は、茨城県産ではないそうですが、「水戸と言えば納豆」というイメージを、まさかのチョコレート商品として表現した驚きの品!
小方さんにも召し上がっていただいたところ、チョコレートも、カカオ豆を発酵させてつくる食べ物であり、同じ発酵食品である納豆と共通する味わいがあると納得されていたそうですよ。


冬場に登場するチョコレート商品「水戸偕楽園の梅チョコ」は、水戸の観光名所として名高い「偕楽園」の梅祭りに合わせて考案した品。フリーズドライの梅フレークを混ぜ込んだココナッツ風味のサクサクと軽い食感のメレンゲを、クーベルチュールチョコレートでコーティング。韃靼そばの実が食感のアクセントとなっています。こちらも、地元産素材を使っているという訳ではありませんが、水戸の象徴とも言える「偕楽園」や梅林のイメージを表現した、「水戸銘菓」と言える一品です。



地元とのさらなるコラボの実現、地域と人に選ばれる店を目指して

最近では、茨城県猿島郡(さしまぐん)にある「長野園」という茶園とのコラボで、「燻製ほうじ茶」というオリジナルのお茶も共同開発。お店でも販売されています。



茶園とのコラボレーションで開発した「燻製ほうじ茶(スモークほうじ茶)」(80g 900円 税込み)


小齋シェフが、地元のスイーツイベント「いばらきスイートフェア2015」で、「お茶」を使ったお菓子というテーマに対して、焙じ茶を使ったケーキを創りたいと、京番茶のようなスモーキーな香りの焙じ茶を「長野園」さんにリクエストし、この「燻製ほうじ茶」が完成したといいます。



テラス席でイートイン可能。ドリンクに「長野園」のお茶も選べる。「スモークほうじ茶」(400円 ミルク付+60円 税込み)


「スモークほうじ茶」をはじめ、「長野園」の「さしま茶」各種もオーダーすることができ、ケーキと一緒にイートインで楽しめます。小齊シェフ曰く、スモークほうじ茶は「岩間栗のモンブラン」とも相性がよく、ミルクを足して飲むのもお勧めだそうです。



「マカロン パリジャン」(1個170円 税込み)にも岩間栗を使った「マロン」がある


今、社会全体で掲げられている「働き方改革」によって、職人仕事を大切にしたいと思いつつ、労働時間を短縮しなくてはならないジレンマがあり、お菓子業界も農家さんも、厳しい状況にあると感じていらっしゃるという小齊シェフ。営業時間を以前よりも短くしたり、製造するアイテム数を絞り込んだり、といった対応もされているそうです。
そんな中でも「ここが一番美味しいお店、とお客様に思い続けてもらう」という気持ちをもって、地域に認められていく必要があると仰います。
近年、菓子店の働き手が足りないといった声も聞かれ、特に地方ではその傾向が強いとも言われていますが、「ここで働けば、技術が身に着くと、若い方々に思ってもらえるようにもしていきたい」とのこと。「お互いが選び選ばれて、信頼関係を築いていきたいですね」と、前向きなお言葉を聞かせてくださいました。
これからも、茨城県ならではの、オリジナリティある菓子を提案していかれるであろう「パティスリーKOSAI」さん。そこからさらに、茨城県のスイーツ業界の次世代を担う若手パティシエ達が育っていくことを願っています。


(取材・文:スイーツジャーナリスト 平岩理緒)




パティスリーKOSAIの外観 

 

店名 パティスリーKOSAI
住所 茨城県水戸市元吉田町2238-6
電話 029-304-5560
FAX 029-304-5560
営業時間 10:00 – 19:00
最寄駅 JR水戸駅
目印 JR水戸駅から車で約10分、国道235号線沿い
定休日 不定休
駐車場 有り    
イートイン 有り
お取り寄せ 一部可(電話かFAXにて)
ホームページ

http://www.p-kosai.com/




Submit to FacebookSubmit to Twitter