都内の有名店やチョコレートメーカーを経て、故郷の金沢で2007年に自店をオープン。移転を機に、チョコレート商品にもより注力。地元食材を使う機会が増えているそうです。

ショコラトリー・パティスリー カカオテの藤田修平シェフ
 

 

金沢市で独立オープンし、移転して迎えた11年目。この先に目指すのは?

こんにちは、スイーツジャーナリストの平岩理緒です。日本各地の菓子店による、スイーツで地域を盛り上げる取り組みをご紹介するこのコラム。第三弾では長野県のお店を取り上げましたが、第四弾は石川県・金沢市の「ショコラトリー・パティスリー カカオテ」です。オーナーの藤田修平(ふじたしゅうへい)シェフは、製菓専門学校卒業後、フランスでの研修を経て、都内の有名パティスリーやホテルに勤務。その後、フランスの製菓用チョコレートメーカーのテクニカルアドバイザーを務め、2007年、帰郷して金沢市内に自店をオープン。そして2016年10月、現在の場所に移転されました。

「前の店舗から車で10分程の場所で、金沢の方は歩く距離ではないですね。特に宣伝もせず、ひっそり移転したので、最初はお客様も少ないかと思いきや、想像以上に沢山の方がいらしてくださって、移転後、最初のバレンタインとなった2017年2月など、生産が追いつきませんでした。」と藤田シェフ。

金沢駅からやや離れた住宅街で、幹線道路からも一本入った場所ですが、元々、前の店舗の頃からこの地域に住んでいたため、土地勘があったそう。ちょうど空き物件の出たこの場所が、実は車通りが意外と多い抜け道になっていることもご存じで、移転を決められたそうです。専用駐車場のスペースも増え、厨房・売り場を含めた店舗面積も以前の約1.5倍に。10年目を節目に、新たな態勢でスタートされています。



石川県産素材を使ったチョコレートアイテムを少しずつ増やして

新しい店舗で特に充実させたかったのは、得意とするチョコレート商品。そのため、厨房にも専用の作業部屋を設け、冷凍・冷蔵設備も増やして、ボンボンショコラに力を入れられる環境を整えました。「以前の厨房は、専用ルームが無かったので、ショコラを製造する時には、一度、生菓子や焼き菓子の作業を止めて、温度などの環境を整えてからでないと取り掛かれませんでした。今は、同時に作業を進めることができ、仕事の効率化にも繋がっています。」とのこと。

専用ショーケース内に並ぶ美しいボンボンショコラ



ボンボンショコラは、冬場だけでなく通年で販売。お店をオープンした当時は、金沢市内はもとより、北陸圏内にもそのような店はほとんどなかったそうですが、10年続けてきて、お客様からも「チョコレートが揃うお店」とようやく認知されてきたと感じているそう。とはいえ、都内の海外ブランド店などと違い、この場所では1粒200円を超えるとハードルが高いと考え、価格もできる限り買い求めやすいように努めているそうです。そのためにも、製造人数が少なくても効率的に仕事が進められるようにと、仕込みの手順なども工夫しているといいます。

約20種程が並ぶボンボンショコラの中でも特徴的なのが、石川県産の素材を使った「石川コレクション」。「加賀棒茶」「純米酒」「熟成梅酒」の3種があり、各2個入りのアソートボックスの他、単品で1粒ずつでも購入できます。

石川コレクション 3種各2個入りボックス 1,364円(税込み)

 

「加賀棒茶」には、地元でも有名な石川県加賀市「丸八製茶場」の「献上加賀棒茶」を使用。藤田シェフがこの「石川コレクション」シリーズを作られたのは、お店をオープンしてから3-4年経った頃だそう。それ以前は、他に色々と使いたい素材があって、地元食材を使うことは特に無かったそうですが、お客様からの問い合わせなども受けてニーズがあることも感じるようになり、自然と、使ってみたいと思われるようになったといいます。最初に手掛けたのが、この「献上加賀棒茶」。それまでにも、そば茶をボンボンショコラに使ったことなどはあったそうですが、試してみると、この焙じ茶ならではの薫り高さが存分に生かされたガナッシュとなり、せっかくなら他にも地元素材を使ってシリーズ化しようと考えられたそうです。

「純米酒」は、創業1625年の金沢市内の酒蔵「福光屋」の「加賀鳶(かがとび)」辛口を使用したガナッシュ。表面には能登半島・珠洲市で作られる天日干し・平釜製法による海塩「珠洲の塩」をのせ、アクセントとしています。梅の花のマークが刻印された「熟成梅酒」は、「萬歳楽(まんざいらく)」という日本酒で有名な石川県白山市の蔵元「小堀酒造店」の「加賀梅酒 五年熟成」を使用したガナッシュ。この梅酒は、北陸で採れた新鮮な紅映梅(べにさしうめ)と、富士山、立山と共に日本三名山に数えられる石川県のシンボル“白山”の伏流水で仕込まれています。梅酒の甘酸っぱさがほんのり感じられ、爽やかで華やかな1粒です。


石川コレクションのボンボンショコラ3種 各1粒194円(税込み)

 

全てのガナッシュに、ミルクチョコレートもブレンドされていますが、一番ミルクチョコレート比率が高いのは「純米酒」。その方が、ビターチョコレート主体にするよりも、余韻に日本酒の風味がしっかり感じられたそうです。逆に一番ビター寄りなのは「加賀棒茶」。ビターチョコレートにも負けない、焙じ茶の香ばしさや味わいが豊かに表現されています。

「石川コレクション」は、今後も種類を増やしていきたいそうで、たとえば作ってみたいのは、珠洲の塩を加えたやわらかなキャラメル・サレ入りの型抜きボンボンショコラ。能登名産として知られる干し柿「ころ柿」をガナッシュに混ぜたもの。今は冬限定で出している、スパイス入り赤ワイン「ヴァン・ショー」味のボンボンショコラに「能登ワイン」を使い、通年で出してもいいかなとも思っています、などとワクワクした様子で話される藤田シェフ。

石川県産の茶葉を発酵させた和紅茶も試したことがあり、ガナッシュを作る時の生クリームに香りを移してみたものの、非常にやわらかな香りしか出せず、苦労されたそう。茶葉の渋みや苦みを出さずに香りだけを最大限引き出そうと、抽出時間を変えて試作したり、茶葉を細かく挽いてみたりと、試行錯誤しているそうです。いつか、10種類を揃えた石川コレクションボックスが出来たらとのこと。完成が楽しみですね。


ボンボンショコラのショーケースの周囲や棚の上にも、アンティークのチョコレートの金型やチョコレートドリンク用ポットなどが飾られている

 

さらに、2017年のバレンタインに、金沢市郊外にある蜂蜜専門店「みつばちの詩工房」による「金沢のはちみつ」の百花蜜をブレンドしたミルクチョコレートの生チョコレートを販売したところ、とても好評だったので、2018年にはビターチョコレートで作ってみようと、試作中だそう。いただいてみると、カカオ分70%ビターチョコレートなのですっきりしたキレのある口どけですが、後味に蜂蜜がふわりと香ります。


2018年バレンタインに販売予定の「金沢のはちみつ」使用の生チョコレート



お店には他にも、チョコレート入りパウンドケーキのカット売りやカカオを使ったフロランタン、バターを使わず軽く仕上げたチョコチップ入りのブラウニーなど、焼き菓子はもちろん、気軽に食べられるおやつ風のチョコレートスナック類も並びます。「ロッシェ・アマンド・サレ」には「珠洲の塩」が加えられ、チョコレートをからめたサクサクのフィヤンティーヌに、カリッとしたナッツの食感と、所々に感じられる塩味がアクセントとなっています。

ロッシェ・アマンド・サレ 734円(税込み)



この「ロッシェ・アマンド・サレ」は、少量食べきりサイズの、テトラパック形の袋パッケージでも販売されています。「プチ・パレ・ノワール」も同じサイズで、こちらには、金沢市の自家焙煎コーヒー専門店の名店「Ally coff é(アリー カフェ)」のオリジナルコーヒー豆「金沢珈琲」を使用。チョコレートを薄く丸く広げたパレショコラに、砕いたコーヒー豆を混ぜてあり、カリカリした食感とコーヒー×チョコレートのマリアージュが楽しめます。「もともと、和菓子と相性のいいブレンドとして作られたコーヒーですが、洋菓子とも相性がいいので。車で5分程度の距離にあって、せっかく近くにこんないいコーヒー専門店があるのだからと使い始めました。イートインで提供するコーヒーにも、こちらの豆を使っています。」と藤田シェフ。

 

左:プチ・パレ・ノワール 280円(税込み)、右:プチ・ロッシェ・アマンド・サレ 216円(税込み)



地元に根を下ろしてやっていく中で、少しずつ世界が広がっていくそうで、「自分は、仕事に没頭すると、ずっと籠りっきりで外に出なくなりがちなんですが、最近は、富山県の企業からコラボのお話をいただいて、外に向けて自店ブランド以外でチョコレートを出すことになったり。どうなるのか楽しみです」と話してくださいました。

ここ5年程、金沢市内はもちろん、富山・福井も含めた北陸三県において、同年代のオーナーパティシエ達による独立オープンが目立ち、皆で集まる機会も増えているそうです。

そんな中で、藤田シェフが、地産地消のお菓子作りについて考えていることは、加賀棒茶を使った焼き菓子や、加賀野菜のさつまいも・五郎島金時を使ったスイートポテトといった品は、既にあちこちのお店で販売されているので、同じものを出すのではなく、自分の店にしかないひとひねりした物を作りたい、ということ。得意とするチョコレートと合わせる使い方は、ボンボンショコラや焼き菓子にとどまらず、生菓子にも応用したいそうです。



定番品からオリジナリティーあるものまで揃う生菓子アイテム

ショーケースに並ぶチョコレートケーキは、たとえば、店名と同じスペシャリテの「カカオテ」。酸味のあるビターチョコレートムースの中に、苦みのあるビターチョコレートムースとナッツのヌガチーヌを忍ばせたものです。

カカオテ 464円(税込み)


他にも、生チョコクリームとサクサクしたチョコクッキーをチョコレート生地で巻いた「生チョコロール」や、個包装の「スフレショコラ」、表面がチョコレートクッキーがけでチョコレートと生クリームとカスタードとを合わせた軽やかなクリーム入りの「エクレール・ショコラ」といった、家族でおやつに楽しめる定番アイテムも揃います。


生チョコロール 972円(税込み)



今後はさらに、タルトショコラに「能登ワイン」を使ったガナッシュを流したり、ころ柿のコンポートを入れたりと、生菓子にも、地元産の素材を使用してみたいそう。さらに、カカオ豆で作るプラリネなど、オリジナリティーあるパーツを採り入れた、「カカオテ」ならではのタルトショコラを作って出せたらとのことです。

また、お店からも近い「大野町」という地域は、古くから醤油造りで有名なところなので、その「大野醤油」を使ったチョコレートなども考えているそうです。

エクレール・ショコラ 324円(税込み)は、親しみやすいスタイルながら、クリームには濃縮カカオパート「P125」を使い、しっかりとビターなチョコレート感を表現



これからの時代に必要な、効率のよい働き方や地域との融合

焼き菓子やコンフィチュールの並ぶ棚

 

現在、製造スタッフの人数がやや少なく、焼き菓子などのまとまった注文が入ると、それをこなすのに精一杯という状況になってしまう場合もあるそうです。「やりたいことは沢山ありますが、人手不足で諦めざるを得ない部分もあります。」と藤田シェフ。金沢市内にもパティシエを目指す方々が学ぶ製菓専門学校はありますが、首都圏や関西などの有名店に就職するケースも多く、地元で就職するという方は、実は少ないのだそうです。そのため、移転リニューアルの際も、仕事の効率を考えて、少人数でもやっていけるように設備を揃えたといいます。

今、「働き方改革」が叫ばれる一方で、修業を要する職人のような伝統技術職の存続が危ぶまれている状況もあります。働き手の人手不足という悩みは、都市部でもそうですが、地方の菓子店が抱える大きな悩みの一つです。そんな中、「チョコレート」は、生菓子に比べて日持ちもするため、売れ残って無駄になるリスクが少なく、ギフト需要のある付加価値の高い商品群と捉えられています。地元産の素材を使ったオリジナリティーのあるチョコレート品も、今後、よりいっそう注目を集めていくに違いありません。「カカオテ」にも、今後、どのような新商品が登場していくか、楽しみにしたいですね。

(取材・文:スイーツジャーナリスト 平岩理緒)

 

ショコラトリー・パティスリー カカオテの外観 

 

店名 ショコラトリー・パティスリー カカオテ
住所 石川県金沢市畝田東4-1123
電話・FAX 076-266-0224
最寄駅 JR金沢駅
目印 JR金沢駅から車で15分
営業時間 10:30-18:00
定休日 火・水曜日(不定休あり)
駐車場 あり
イートイン あり(繁忙期はクローズします)
クレジットカード 不可
お取り寄せ 一部可能 電話、FAXにて
ホームページ http://www.cacaote.sakura.ne.jp

 

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