「実はみつばちと農業には密接な関係があるんですよ」。皆さんになじみ深いはちみつを作ってくれるみつばち、その製造工程を知ったら見る目が変わるかもしれません。

右 有限会社健康自然工房の取締役 犬飼 博(いぬかい ひろし)さん 左 養蜂部主任の石原 翔馬(いしはら しょうま)さん
 

多摩地域西部のあきる野市にある「みつばちファーム」はあきる野市と八王子市で自社の技術を駆使し、採取したはちみつを販売しています。春から秋にかけての気候の良い時期はカフェもオープンしています。今回は「みつばちファーム」を経営、また東京都多摩地域に複数の養蜂場を営む有限会社健康自然工房の取締役 犬飼 博(いぬかい ひろし)さんと養蜂部主任の石原 翔馬(いしはら しょうま)さんに、どのようにしてはちみつが出来るのか、また洋菓子とみつばちの深い繋がりについてお話を伺いました。



東京で養蜂場を始める前の経験

犬飼さんがあきる野市や八王子市で養蜂場を始めたのは今から約16年前、それまではアルゼンチンで養蜂の仕事をしていました。「私は本当は農業がやりたかったんです」犬養さんは7人兄弟の末っ子だったのだそうで、実家の農地は全てお兄様達に渡り、残っていなかったのだとか。「農業をあきらめ、養蜂の仕事をする為に、思い切って移住を決意しました。実はみつばちと農業には密接な関係があるんですよ」と犬飼さんは笑顔で教えてくれました。
アルゼンチンといえば世界有数のはちみつ生産国です。もちろんはちみつ採取の技術や知識のレベルも非常に高く、犬飼さんは現地でそれを学びました。言葉も通じない国で必死になって学び、働くということは想像がつかないほどの苦労もあったことでしょう。でもそのおかげで今、お客様に喜んで頂けるおいしいはちみつが出来ているのですね。
さて、先ほど犬飼さんが言った「みちばちと農業との関係」、これが洋菓子にも大きく関わってくるのです。そのお話はまた後程にして、まずは養蜂場ではちみつがどのように出来るのかをご紹介します。




蜂がはちみつを作りやすい環境を日々研究

「みつばちの巣は木の洞のような空間につくられ、蝋でできた板状の巣板数枚でできています。(※1)養蜂場ではその巣からはちみつを採取するのではなく、蜂がはちみつを作りやすい工夫がなされた『巣箱』と呼ばれる木で出来た箱を用意します。蜂がそこを巣と思い、はちみつを溜めるのです」と石原さん。

巣箱はどこに設置してもいいというわけではなく、季節ごとに咲く花を見て選ぶのだそう。たとえば東京都多摩地区では春早い時期に菜種(菜の花)、そのあとはさくら(ソメイヨシノ、山桜)、5月の半ばにアカシアといった順に咲いていきます。そして蜂の行動範囲は約2kmが一般的なので他の養蜂場と場所が重ならないように巣箱を設置します。

※1:TVなどでよく取り上げられる「蜂の巣」としてみなさんが思い浮かべる巣(サッカーボール大の黒い大きな巣)はスズメバチやアシナガバチなどの肉食の狩蜂の巣です。



めったに見ることが出来ない巣箱の中。無数の蜜穴が見えます。



花の蜜がはちみつになるまで

みつばちはとにかく働き者です。毎日毎日飛び回り、花から花へと移動して花の蜜を吸って巣箱に戻り、はちみつを巣穴に溜めていくのです。
ここでひとつ気が付きませんか?蜂が集めていたのは花の蜜なのに、巣穴に入れる時には、はちみつになっているのです。実は蜂が花の蜜を吸い、体内に溜めている間に蜂がもともと持っている酵素と混ざり合い花の蜜のショ糖をぶどう糖や果糖に変えるのです。これがはちみつです。花の蜜は糖度が40%なのに対し、蜂の酵素と混ざりあうことで糖度は80%にもなるそうです。
「はちみつの味や栄養は蜂の酵素と大きく関係しています。私たちは蜂がいかに質のいい酵素を分泌し、よく熟成させて味の濃い、栄養価の高いはちみつを作れるようになるか日々研究し工夫しています」と石原さん。またお二人はこんなことも言っていました。「もっと大量にはちみつを採取することは簡単なんです。質が良く、味の良いはちみつにこだわると量はぐっと減ってしまいます。でも私たちは喜んでくださるお客様のためにこれからも量より質を優先していきたいと思っています」。




トレサビリティで安全安心の見える化

「私たちは、はちみつの製造工程を細かくルール化してトレサビリティ認定をもらっています。製造されたはちみつ全て一瓶ごとにシリアルナンバーをふることで『いつ』『どこで』『どのように』採取されたはちみつかわかるようになっています。万が一環境問題などが発生した時にはその時期に採れたはちみつをすべて遡って知ることが出来るのです」と犬飼さん。
製造工程が増えることで生産性は下がりますが、お客様が安心して召し上がっていただけることを考えれば省けないと話します。







蜂と洋菓子との深いつながり

はちみつは花の蜜が酵素によって変化を起こした食品と聞いて、それは人工でも出来るのではないかと思い、伺ってみました。
「出来ないということはないと思います。ただしコストがすごく高くなると思います。花の蜜って一つの花に少ししかないんです。それを地道に集める作業だけでもそれはそれは大変です。蜂に任せるのが一番だと思います」と笑う犬飼さんと石原さん。
さらに面白い話を聞かせてくれました。「はちみつの為だけではなく、農産物にとっても蜂が花の蜜を吸う作業は重要です。受粉をしてくれるんです」。人の手でも受粉は出来ますが、めしべに花粉を均等に付けることが出来ないので奇形の野菜やくだものが育ってしまいます。その点、みつばちはめしべの周りをくるくる回って花の蜜を吸う習性がある為、均等に受粉させてくれるのだそう。「たとえば、ショートケーキにのっている苺もみつばちが上手に受粉させてくれたからきれいな形の苺が出来るんです。野菜もそうですが、果物はほとんどがみつばちのお蔭できれいな形に育ちます」。日本で生まれた苺のショートケーキにはきれいな形の苺が欠かせません。その苺がみつばちのお蔭で出来ているという話を聞いて驚きました。みつばちを見かけると「怖い!」と思っていたけれど、私の大好きなショートケーキの苺を作ってくれるみつばち、見る目が変わりそうです。







太陽の光がたっぷり入るカフェ

春からオープンする「みつばちファームカフェ」はあきる野市上ノ台にある畑の真ん中に建てられています。周りが畑なので建物がなく、晴れた日の昼間はたっぷりと太陽の光が入ります。店内は明るくて、そして温かくとても居心地の良い空間です。こちらではあきる野市産や八王子市産のはちみつをかけたパンケーキが頂けます。
また大きなガラス窓に向けて設置されたカウンターではガラス窓の向こう側すぐのところに巣箱があり、そこで蜂がせっせと蜜を運んで出入りする姿が見られます。
みつばちが一生懸命はちみつを作ってくれるおかげでおいしいはちみつが出来る、ケーキに欠かせない苺もきれいに実る・・・そんな話を聞いた直後だったのでガラスの向こう側で働く蜂を愛おしく感じました。




現在はお休み中のみつばちカフェ。3月を目途にオープン予定です。菜の花の季節には窓の外一面に菜の花の黄色に染まります。



桜のはちみつ

東京都あきる野市、八王子市で採蜜した天然はちみつ「多摩のさくら」です。口の中でふわりと香る桜は、満開の桜の風景を想像させます。またコクもありとってもフルーティー。紅茶やヨーグルトそして緑茶にいれて頂くのにも最適なようです。また、お菓子作りに使えば桜の香りをほのかに感じさせるおいしいお菓子が出来上がるのだとか。

実は桜のはちみつは非常に珍しいそう。理由は東京で桜が満開になる4月中旬は蜂がまだ少ないため花の蜜の採取量がとっても少ないのです。有限会社健康自然工房では蜂を多く育てる技術を開発し現在ではこうして店頭にたっぷりと並べられるだけの採取量を確保出来るようになったのです。



多摩のさくら 1本100g 1,047円、200g 1,814円



百花蜜のはちみつ

東京都あきる野市と八王子市で採蜜した天然のはちみつ「多摩の野山の蜜」はいわゆる百花蜜です。えご、栗、とち、草花などの様々な花の蜜が含まれています。皆さんがはちみつの味を想像するときにイメージするのはきっとこの百花蜜の味でしょう。その土地や地域により花の種類が異なるため、百花蜜の味も変わります。「多摩の野山の蜜」はとってもフルーティーで深いコクがあります。はちみつの味を強くアピールしたいときにはこちらのはちみつがおすすめだそう。



多摩の野山の蜜 1本100g 1,047円、200g 1,814円


栗のはちみつ

一口食べてこの渋みと独特の香りと濃い味の虜になった「多摩のくり」。鉄分、ビタミン、カルシウムが他の蜜より多く含まれていて栄養も濃く、そして色も他と比べると少し濃い黄金色です。ナッツ類を付け込んでバケットと頂いたり、リコッタチーズとも相性抜群なのだそうです。



多摩のくり 1本100g 1,047円、200g 1,814円


今回ご紹介したのは3種類のはちみつですが、店内には、まだまだたくさんの種類のはちみつがあり試食をさせていただきながらお好みのひと品を選べます。スタッフの方に食べ方のアドバイスを頂きながらはちみつを選ぶのはとっても楽しいひと時でした。



遠くから足を運んでくれるお客様

犬飼さんにこの仕事をしていて幸せを感じる瞬間はどんな時かをお伺いしてみました。「うちのはちみつは濃厚な味と糖度の高さにこだわっているんです。お客様もそれを感じてくださって、遠くからでも買いに来てくださったり、ネット注文して下さる方が多くいらっしゃいます。『ここのはちみつはおいしい』と言って下さるリピーターさんもいらっしゃいます。それがうれしいですね、幸せです」。はちみつと言ったらはちみつファーム!そういって下さるお客様のためにこれからも研究を重ねさより良いはちみつ採取を目指す犬飼さんと石原さん、これからも私たちにおいしいはちみつを届けてくれることでしょう。

最後になりますが犬飼さんも石原さんも驚くほどお肌がつやつやでした。きっとはちみつ栄養がもたらす効果なのでしょう!

 

(取材・文 まちおやつプロジェクトメンバー)

 

店名 みつばちファームカフェ
住所 東京都あきる野市上ノ台37−3
電話・FAX 042-519-9327
カフェオープン時期 3月を目途に考えております。
営業時間 11時~17時
定休日 水曜日 
駐車場 あり 
お取り寄せ お電話にてお問い合わせください
HP http://88838.net/farm-cafe/

 

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