「五島の温暖な気候で育った果物は、大きくて、甘くて、とてもおいしい。気軽に楽しんでいただきたくて、ご近所様におすそ分けするような気持ちで作っています」

びんつめ専門店くまごろうの店主、伊藤さん。
Iターンで長崎県五島市へ移住してきました。五島は、お父さんの出身地。親戚がいて、夏休みに遊びに来ていた思い出の地です。




食べきれないほど庭になる果実を、びんづめにして

今回登場のびんつめ専門店くまごろうは、長崎県五島市にあります。
五島市は、長崎港の西の海上約100㎞に位置する大小152の島々からなる島群の南西部にあります。島には20以上のキリスト教の教会があり、キリシタン文化が有名です。
野生の椿からとる椿油や郷土料理の数々、 “かんころもち”などが特産で豊かな自然に恵まれた土地です。

そんな五島に店主の伊藤さんが移住してきたのは、2013年のこと。移住して少しのんびりしている時に、もともと庭に生えている甘夏や梅の木が、たわわに実を付けていました。
その実の多さは、ジャムや梅干しなどの保存食にしても、食べきれないほど。また、島は高齢化が進んでいて、庭の果物を収穫するところまで手が回らなくなってそのまま落果させているお宅も見受けられました。

「も、もったいない……」これを何とか島の人以外にも楽しんでもらえないものか。そう思って始めたのが『びんづめ専門店くまごろう』だそうです。「五島のおいしい果物を知り合いにおすそ分けするつもりで作っていますので、安心素材の手づくりジャムになりました」と伊藤さん。




おばちゃんが一房ずつむいてくれた甘夏のつぶつぶ感をそのままに

「お宅では、甘夏などの大きなミカン、どうやって食べますか? 小さい頃、わが家では甘夏を大人が一房一房むいて、そのままお口にポンと放り込めるようにして出してくれていました」と伊藤さん。
いざ自分がむく側になると、これは大変な作業です。3人兄弟のいとことよく遊んでいて、叔母さんがおやつに甘夏をむいて伊藤さんを含めた子供4人に食べさせてくれたのが懐かしい思い出に。彼女は果物でジャムをよく作る人だったので、くまごろうのジャムもその影響があるかもしれないそうです。

ちなみにくまごろうの甘夏ジャムは、果肉のつぶつぶがきれいにそのままの形で味わえます。伊藤さんが一つずつ手でむいてジャムにしているからです。シーズン中には、1500個以上もむいて加工。くまごろうのジャムでも、ベスト3に入る人気商品です。


 

左から、つばきねこのいくりジャム 864円(税込み)と、くまごろうの甘夏ジャム 864円(税込み)
“つばきねこ”は五島市の人気ゆるキャラです。島にたくさん咲く椿を帽子のようにかぶっています。




「くまごろう」のイチオシジャムは、“いくり”です。いくりは、6月後半から食べられる深紅のスモモで、直径が3~4cmほどの果実。生で食べると、「酸っぱい!」と思わずお顔がキュッとなるほどの酸味だそうですが、これがジャムになると深い味わいに変身します。

赤紫色のジャムは、コクがある奥深いおいしさ。酸味がマイルドな爽やかさになって、パンやヨーグルトに合わせるといつもより少しリッチな味わいが楽しめて、まるで “スイーツ”を食べているようです。

「最近は果物を食べる人が減ってきて、せっかくおいしいものも、『皮をむくのが面倒』とか、『手が汚れるのでパス』と敬遠され気味だそうです。でも、ジャムならビンを開けてすぐ食べられますので、手軽に楽しんでいただけたらいいなと思っています」と伊藤さん。

 

畑になっているいくりの実。収穫期は毎年6月後半から。スモモによく似た果実です。 


もう一つご紹介したいのが、栗のジャム。今は秋の新栗を待っているところで在庫がないのですが、五島市産の栗を、伊藤さんが一つひとつ丁寧にむく工程を経て、滑らかなペースト状に仕上げるそうです。こちらもシーズン中に50kgほど手むきをするそうで、伊藤さんが丹精こめた栗のジャムを楽しめる秋が待ち遠しいです。




今では“くまごろうさん”と呼ばれるほどに

伊藤さんが五島へ移り住んできたのには、ちょうど流行っていた「田舎暮らし」の影響もあったそうです。会社員時代は、帰りも遅く、大企業だったので業績に対するプレッシャーも。忙しい都会生活を送っていたからこそ、田舎暮らしが輝いて見えたのかもしれません。

五島市は、小さなころから夏休みなどに遊びに来る所だったので、「暮らす」とか「お金を稼いで生活していく」という目線で見ると都会とは大違い! 地域経済が、島で完結していることにびっくりしたそうです。また、島では自営業の家が多く、それぞれの人が自分の能力を活かして働いていました。



 

つばきねこのジャム各種 864円(税込み)
季節が巡るごとに梅やいちごの果物、むらさき芋や栗などの野菜・木の実とジャムの種類も変わっていきます。くまごろうのジャムは、五島市産の素材を使って丁寧に手作りをしています。




伊藤さんは「一種のカルチャーショックでしたね。移住して島で暮らしているうちに、自分も何かしたいという気持ちがムクムクとわいてきました。『いいな!』と思ったのが、皆さんそれぞれ屋号というか、『魚屋のみっちゃん』のように呼び合っていました。自分も“屋号”で呼ばれるようになりたいと思いました」と話してくれました。

会社員生活で鍛えた分析力と行動力、そして「庭に落ちている果物がもったいない!」という想いから「びんづめ専門店くまごろう」を開店することに。今では、念願の屋号 “くまごろうさん!”と呼ばれるようになり、島に永住の気持ちが固まったそうです。

五島の厳しくも豊かな自然に育まれたおいしい果実や野菜を、丁寧にびんづめにしてくれている伊藤さん。今日もおすそ分けのジャムを遣唐使船も立ち寄った五島から、“迅速丁寧に”送り出してくれています。ぜひ一度、“おすそ分け”されてみてはいかがでしょうか。



 

五島・鬼岳からのながめです。空も海も広くて自然の豊かさを満喫できます。

 

 

(取材・文 大倉愛子)


 

■びんづめ専門店くまごろう
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