目指すのは30年後のおやつ作り。「今の子どもたちが大人になった時、僕らのおやつがいつも身近にあって、変わらず安心して気楽に食べてもらえるもの」そんなおやつを作りたい。

山本佐太郎商店4代目代表の山本慎一郎さん

 

 

まっちんとの出会いと30年後のおやつ作り

岐阜県岐阜市の山本佐太郎商店は141年の長い歴史を持つ、油糧問屋から始まった食品問屋です。岐阜市はその昔、油売りから身を立てたと言われる斎藤道三が美濃を平定してからの長い歴史があります。岐阜の歓楽街「柳ヶ瀬」は戦後から高度経済成長期まで長い間活気のある町として栄えてきました。
曾おじいさんから続く商売は、戦前は菜種を石臼で挽いて油を採るところから始まり、次に岐阜県の伝統工芸和傘づくりで、美濃和紙の防水・防カビ・防虫のために塗布して仕上げるための植物油の扱いを行いました。さらに戦時中にはコールタールなどの扱い、戦後は繊維業から、柳ヶ瀬含めた町の発展と広がる飲食業界へ…と常に時代と共に社会のニーズにあわせた油の取り扱いを営んできました。


しかし最近では、岐阜市近郊の歴史ある和菓子店が店じまいされたとか、経営者や職人の高齢化による後継者不足で明らかに経営が厳しいところが増えてきています。

「このままでは、地域のコミュニティまでなくなってしまう」

山本佐太郎商店4代目代表の山本慎一郎さんが今抱える一番の問題です。


山本さんは、先代の社長であったお父様の急逝により、22歳にして急きょ実家を継がれました。当時はこれからの問屋はどうあるべきか、危機感と共によく考えたそうです。「これからの時代、そもそも問屋業は必要とされるのか? 食べていけるのか? 本当に悩みました」


そんなときに、伊賀上野の地でこだわりを
もって作り続ける和菓子職人、「まっちん」こと町野仁英さんと出会いました。
まっちんは山本さんと同年齢。意気投合して何か力を合わせてやれることはないかと考え抜いた結果、「和菓子職人と油屋が一緒になって、かりんとうをつくろう!」と決めました。

目指すのは【30年後のおやつ作り】。「今の子どもたちが大人になった時、僕らのおやつがいつも身近にあって、変わらず安心して気楽に食べてもらえるもの」そんな長い時間愛されるおやつ作りです。




「大地のかりんとう」

こだわりのレシピはまっちん作。おいしいものはシンプルであるべきと。レシピはシンプルに突き詰めて工夫する。選び抜いた北海道産石臼挽き小麦全粒粉、岐阜県産小麦粉などの厳選素材を使用し、純国産米油で丁寧に手揚げした素材感あふれるかりんとうです。
そして、このこだわりのレシピを実現するのは誰かと考えたときに白羽の矢が立ったのが、岐阜市内の「いぶき福祉会」。社会福祉事業「ねこの約束」として既にマドレーヌやかりんとうを作っている実績があったためお願いしました。


 “おやつのことをきちんと伝えたい”という気持ちから、発売当初はイベントなどで一つ一つ手渡しで販売しました。

かりんとうは一般的なおやつです。スーパーの棚に並べば、ほかの商品との価格競争に巻き込まれ、作り手の想いが伝わらないだけでなく、安売りされてしまうことも多々あるかもしれない。そうなるとこだわりの商品を長く続けて作ることはできない。

そう考えて、おやつへのこだわりをお客さまにきちんと伝えてくれるお店に置いてもらおうと決めました。


初めはなるべくコストをかけないように透明なパッケージに帯だけというシンプルなデザインでしたが、さらにおいしくお届けするために袋の素材をアルミにして、脱酸素剤も入れるよう改善しました。パッケージも素朴なおやつの良さが伝わるよう、デザイナーと相談して作るようにしました。素材にこだわり、ストーリーあるお菓子として、きちんとブランディングしながら育てました。

こうした小さな努力の積み重ねで、初代「大地のかりんとう」は、今ではまっちんとのコラボシリーズ「大地のおやつ」の看板商品として、シリーズ商品と一緒に日本全国で愛されるようになりました。




雇用の創出にもつながっています

初代「大地のかりんとう」は有難いことに非常に売れました。
実は「いぶき福祉会」ではかりんとうが売れすぎたとき、生産があまりにも忙しくなってしまい、「なぜここまで忙しくなるのか?」と、あつれきが生じてしまいました。その時、「いぶき福祉会」では、代表の方が従業員のみなさんを商品が販売されているお店に連れて行ったそうです。

店頭で喜んでかりんとうを買って帰るお客さんの笑顔を見たとき、忙しさの意味を理解し、働き甲斐、生き甲斐へと変化したそうです。

それ以後はどんなに忙しくても、ものづくりにより一層励んでくださるようになりました。


この後、変わらず大人気の「大地のかりんとう」は、今でも「いぶき福祉会」に生産の全てをお願しています。

お客様の生産機会の創出にも貢献したいと思い、「大地のおやつ」シリーズの全商品は全国のそれぞれ異なる菓子屋さんに製造をお願いしています。




「大地のおやつ」シリーズ

「大地のかりんとう」から始まった「大地のおやつ」シリーズ。年に1~2アイテムずつ増やしてきた商品群も今では19品。
「3じのビスケット」は、石臼挽き小麦ブランを配合した生地を使った素朴なビスケット。

生産ロットが大きい看板商品の一つですが、販路が拡大して回転もますます速くなってきました。

「ツバメサブレ」は、貴重な国内生産の小麦をふんだんに使用した和風のサブレです。滋賀県日野町で生産される古代小麦「ディンケル小麦」の石臼挽き全粒粉、 岐阜県産と愛知県産の小麦「イワイノダイチ」など個性ある素材を使って、素朴で力強い味わいのおやつに仕上げています。全く飽きのこない味わいは、これから30年後の未来の子供達にまできっと伝わると確信させてくれます。


 

見ていて楽しくなるパッケージの「大地のおやつ」いろいろ。




盛り付けるとそれぞれ個性あるかわいい形でさらに食欲がそそります。



最新作は2月2日発売の「にんにんクッキー」です。これは和菓子職人まっちんの故郷であり、忍者の町として有名な伊賀上野市の「忍者の非常食(堅焼きのお菓子)」をイメージして命名されたそうです。

ちなみに日本では忍者の町として有名な「伊賀上野市」、「甲賀市」のどちらの観光協会も2月22日を「忍者の日」として記念日に定めています。








おやつにかける想いとその先へ

毎日のおやつを目指しています。「手土産」や「ギフト」として人の生活に寄り添い、日常生活に濃淡をつけられるような存在になりたいと思っています。そして30年後のおやつとしても、子供が大人に成長して親になった時に、その子供にも食べさせたいと思われるおやつを作っていきたいです。

お菓子を通じて地域密着はもちろん、全国の人ともつながれる。菓子事業部としてスタッフも増えました。新たな人との出会いは売り上げを伸ばしてくれただけではなく、また新たな素材が見つかるきっかけとなり、次のおやつにつながっています。


実は今、おやつの次の新しいことを考えています。「出汁」です。

構想はまだ詳しくはお話しできませんが、食を通じて「日本の文化」を大切に伝えていきたいと考えています。

山本佐太郎商店、山本慎一郎さんの夢はさらに広がります。

地方から始まったうねりが全国に波及する。これからの日本のあり方の一つかもしれません。また、次の取り組みも楽しみです。



 


近所でも目を引く木造の美しい建物が倉庫です。


全国のお取り扱い店に向け、「大地のおやつ」は毎日発送されています。

 

 

合名会社 山本佐太郎商店
代表社員 山本慎一郎

岐阜県岐阜市松屋町17番地
058-262-0432


大地のかりんとう・大地のおやつオンラインショップ
https://www.m-karintou.com/

大地のかりんとうFacebook
https://www.facebook.com/m.karintou/

 

(取材・文 まちおやつプロジェクトメンバー)

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