海外版“まちのキッチン”から第一弾、世界遺産である美しい海岸が有名なアマルフィ。酸味が少なく、甘さが香る大きなレモンが町中にあふれます。

 

南北に細長く、気候の特徴も地域で異なるイタリア。日本と同様、きっとおいしい“まちおやつ”があるに違いない!

南北に細長く、地域性豊かなイタリア。長い歴史があり、州の独立主張が各地であり、伝統あり、変わらないこと・変えないことを守る流れがあり、まさしく“まちおやつ”があるべき国として期待し、今回は観光地としても有名な断崖絶壁の町「アマルフィ」の名物のレモンと、その香りと味わいを生かした食を探りました。
まず有名なのは、イタリアのお土産であるレモンチェッロ。でも、それ以外にはないだろうか?
お菓子作りでは香りづけで頻繁に使われるレモンですが、主役になることは少なく、ここでならきっとレモン料理はあるに違いない!と探すことにしました。

 

 

地中海沿いの断崖絶壁に育つ、甘い香りの大きなレモン。

ユネスコの世界遺産(文化遺産)にも登録されたアマルフィ海岸。今回のまちおやつの原料であるレモンは、ここの海外沿いの断崖絶壁のレモン畑で育ちます。
イタリアのレモンはアマルフィに加え、最大産地であるシチリア島のシラクーザのものが有名です。これら産地は、地中海の海岸線に沿う畑があることが共通しており、地中海性気候のさわやかで風通しのよい、一年を通して温暖な気候のもとでレモンが育ちます。
さらに、アマルフィのレモンはI.G.P.(Indicazione Geografica Protetta=保護指定地域表示)に指定されているブランドレモンで、“スフザート・アマルフィターノ(Sfusato Amalfitano)”といいます。ごつごつと非常に肉厚な皮で覆われており、重さは約100gもある巨大な品種です。シチリア島のレモンと比べるとより香りがよく、酸味のなかにも甘さを感じられるのが特徴です。

 

 

 

 

アマルフィのまちおやつ、デリッツァ・アル・リモーネは癒しの味。

ティラミスブームでイタリア菓子に脚光が当たるようになるとパンナコッタも話題になり、一時はイタリア菓子専門の菓子店も増えるまでになりました。その時に日本でもブームになったのが、レモンのケーキ、“デリッツァ・アル・リモーネ”です。
ブームからしばらく経ったこともあり、すっかり忘れていました。ここ、アマルフィの名物ケーキです。
では、本場イタリア・アマルフィの味は!?
デリツィア・アル・リモーネ発祥のお店、“パスティッチェリア・サル・デ・リゾ(Pasticceria Sal De Riso)”では、デリッツァ・アル・リモーネは、ふわふわのスポンジにカスタードクリームが絞り込まれ、その上からたっぷりのレモン風味のクリームが覆っていました。
レモンのケーキと聞くと、フランスの定番タルトシトロンのように、食べる前から口をすぼめてしまう酸っぱいイメージがありましたが、これは全く酸っぱさを感じません。むしろレモンの香り漂う甘いクリームの癒しのケーキでした。

 

 

Pasticceria Sal De Riso / Piazza Cantilenza 28, Minori (SA) +39.089.853618

 

 

アマルフィの家庭に伝わる幻の味を発見。

レモンの町なら、ケーキ店の名物商品だけではないはず!と、それ以外の食べ方を探りました。
まずは、イタリア土産で欠かせないレモンチェッロ。すっかりイタリア全土のお土産のようですが、発祥はアマルフィであり、アマルフィのレモンを使ってこそ香り高いレモンチェッロのおいしさが得られるとのこと。
レモンチェッロは冷たくして、食後に消化を助ける食後酒として飲むのが一般的です。普段お酒を飲まれない人なら、アイスクリームにかけて食べるのが簡単でお勧めです。お酒に強い人なら、かき氷でもおいしいかもしれませんね!

デザートでは、夏ならアマルフィレモンをたっぷり使ったグラニータ(シャーベット)があちらこちらで食べられるそうで、これは残念ながら訪問のタイミングに合わず、頂くことができませんでした。これらは時期さえ合えばアマルフィの町を散策して出会うことができますが、ぜひ見つけたかったのがアマルフィレモンを生かす家庭の味。

それは、そのまま食べるか、パスタや米料理とのこと。
そのまま食べるのは、スライスしたレモンにオリーブオイルと塩をかけてサラダとして食べるものです。日本では酸っぱすぎてレモンを直接食べることはできませんが、ここではレモンをそのまま使ったサラダが一般的だそうです。

 

 

 


料理では、なんと“幻のパスタ”として日本のテレビでも紹介されていました。
オリーブオイルとレモンとバターだけで仕上げる、とてもシンプルなレモンパスタと呼ばれるものですが、レストランなどではあまり見られず家庭で作るマンマの味であるために、そう呼ばれているようです。これは自分で作らねば、幻のおいしさを味わえない!と奮起し、私も作ってみました!
イタリア原料を揃えて作っておいしくならないわけがない!と揃えた材料は以下の通り。
・レモン・・・アマルフィレモン。
・パスタ・・・ナポリのグラニャーノ。パスタ乾麺発祥の地、ナポリ近郊で作られます。低温乾燥により濃厚でもちもちと歯ごたえのあるパスタのため小麦の味わいをしっかり感じられます。
・オリーブオイル・・・南イタリア産オーガニックのもの。地元産であれば南イタリア産のレモンとは相性が良いに違いない、と期待。
・バター・・・ピエモンテ産。アルプスの麓の放牧牛の乳から作った無塩バター。イタリアは無塩バターが一般的で素朴な乳の味わいです。

そのお味は、そのまま食べられるレモンだけあって想像とは違います。バターが入ったクリーミーなオリーブオイルと、柔らかいレモンの酸味と香りはホッとする味です。
マンマの手作りでは、ここにチーズを入れるなど、各家庭の個性あるパスタができるのですね。
そして子供のころから食べ続け、日々のいろいろな出来事と共に記憶に残る幻のパスタとなっていくのかな、と自分の子供のころを振り返ったりしました。私の想い出の母の味(パスタ編)は、野菜入れすぎのナポリタンですね。ケチャップ味が忘れられません!
ちなみにもう一方はリゾット。こちらは春野菜とパルミジャーチーズに香りづけのレモンをたっぷり振りかけた一品です。

 

 

 

さて、話を元に戻し、日本ではアマルフィレモンは手に入りませんから、似たものを作る場合には、レモンを塩レモンとして用意するのがベストだそうです。塩レモン漬けにして時間を置くことで、レモンのきつめの酸味は取れて味わいがまろやかになり、アマルフィレモンを使った幻のパスタの味わいに近づけることができます。

 

 

特異な地形ならではの地産素材栽培は、大勢の町の人が活躍する伝統的農業でした。

アマルフィを訪れなければ食べられない貴重なアマルフィレモン。それは、断崖絶壁の地形から生み出される太陽の光をたっぷり浴びた恵みの果実。それがゆえにレモン農家の重労働は想像を超えます。
主要な道路からはレモン畑に行きつけず、最後はあまりの急勾配で歩いて近づくことしかできないことも。収穫時はそんな畑をレモン箱を背負って上り下りしなければなりません。
原産地呼称などのプレミアムなブランド商品の裏側には、こんな伝統農業があったのですね。
町の人の力と自然が一緒になって作り上げる果実。日本も全国たくさんありますが、引き続き大切に伝えていきたいと思います。

 

 

(文:まちおやつプロジェクトメンバー)

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