進化し続けるほしいも。料亭勤務経験ありの理系三代目が考える、農業の新しいカタチ。奥歯からあの郷愁の味を思い出せたあなたは、間違いなく茨城県民です。





今からおよそ200年前に保存食として発明されたほしいも。一昔前までは乾燥度合いの強い、粉をふいた黒っぽいものが主流でした。戦時中には「軍人いも」と呼ばれ、戦時食の一つだったそうです。いまや嗜好品として、お芋の品種や切り方にもこだわったしっとり食感のものが出回り、茨城県が誇る高級贈答品になっています。そのねっちりと甘い滋味深さは、茨城県民のDNAに刷り込まれていることでしょう。もちろん生産量は茨城県が日本一、全国のおよそ9割をつくっています。その中でも特に生産が盛んなのは茨城県ひたちなか市周辺。そこで小さな小さな看板を出すしんあい農園さんを訪ね、お話を伺いました。

 






経験から見える農業の可能性

しんあい農園三代目の澤畑明宏さんは、少しおもしろい経歴の持ち主。大学で栄養学を学び、精肉加工メーカーへ就職、転職して料亭のフロアサービスマンとして勤務した後、ご実家であるしんあい農園に帰ってこられました。さまざまな経験の中に一貫していたのは『食べ物に精通していたい』という強い思い。そんな澤畑さんは、実にいろいろな改革を試みています。

三代目となってまず取り組んだ改革は、料亭で直にお客様と接するなかで得られた「サービスにも価値がある」という思いによるものでした。農園オリジナルロゴマークをつくったり、ナチュラルテイストの小さな贈答用箱をつくったり、東京のマルシェに出店するなど、おしゃれに見えるための努力を欠かしません。これは、ほしいもを贈る人・贈られる人を思う生産者からのサービスにほかなりません。







変えたのは雰囲気だけ?いえいえ、もちろん味の方も抜かりはありません。地域の品評会でも上位入賞の常連というその味は、大学で学んだ調理科学の知識のたまもの。収穫したお芋のサイズや糖度に合わせ、毎日加熱や加工の条件を変えているそうです。生産のピークを迎える11月から2月は毎朝4時半起きでボイラーに点火し、じっくり時間をかけて蒸しあげます。また、生産の最終段階である乾燥は、なんと先代手作りの機械が現役ではたらいているのだとか。「手がかかるけれど、その都度設定を変えておいしいほしいもを作っていくのが愛おしい」とおっしゃる澤畑さんから先代に対する感謝が伝わってきました。

そんな澤畑さんが作るほしいもは香りが強く、ほんのり赤みがかったべっこう色。ツヤも甘さの証です。生産量のおよそ8割が通販で、予約開始の12月1日から2週間は、朝から晩までひっきりなしに電話がかかってくるのだとか。直接販売もしていますが、しんあい農園を目指してくれる人だけにわかればよいと、看板はあえて小さくしているのだそう。それだけクチコミ力があるほしいも、気になりますね!
 

 

 


やってみたい!ほしいもの新しい食べ方

澤畑さんに生産者ならではのほしいもの食べ方を尋ねてみました。加工のお手伝いに来てくださるお母さん方に人気があるのは、ほしいもに牛乳と少しのお塩を加えてミキサーにかけた温かいほしいもポタージュスープ。生産ピークの寒い時期、温かいスープはからだに染みわたりそうですね。取材に伺ったのは夏だったので、冷製バージョンをいただきました。お砂糖を加えていないのにとっても甘いスープはまるでスイーツ。夏バテでもぺろりといけます。

また、丸干しのほしいもをかつらむきにしてバターを巻いたものもよく作るそう。ただ、バターをのせるだけじゃなく、見え方にも気をつかうのは料亭経験のある澤畑さんならではですね。こちらは紅茶やお酒に合いそうです。
 

 

今後の野望は?新しい農家のカタチ

澤畑さんに今後やっていきたいことを聞いてみると、出てくる出てくる!「やわらかくて栄養たっぷりのほしいもをお年寄りのおやつとして福祉につなげていきたい」「学童保育を始めて、そこに来る子供たちやお母さん方がほしいもに興味をもってくれたら嬉しい」など、農家という枠にとどまることのないアイデアを次々と話してくださいました。妄想ではなく、ちゃんと地に足の着いた目標として理想を追いかける姿勢に心を打たれます。また、ほんのちょっとだけ具体的になってきている構想として、まちのパン屋さんやお菓子屋さんとお芋を使ったものづくりを考えていると教えてくれました。近々、ひたちなかが茨城県のグルメ観光名所になるかもしれませんね。まちとそこに暮らす人をまるごと巻き込んで6次産業化を目指す澤畑さんの取り組み、今後も目が離せません!
 

 

今回の取材先

ほしいも工房 しんあい農園
〒312-0003 茨城県ひたちなか市足崎433-2
TEL:029-285-0180
FAX:029-285-7627
※ほしいもの注文は12/1から

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