鹿児島県で約20年、地元に愛される菓子作りを続ける人気店。豊かな自然の中で手に入る地元素材を積極的に使っていますが、それは決して特別なことではないとシェフは語ります。

パティスリー ヤナギムラの柳村豊仁シェフ



鹿児島で5店舗を展開するパティスリー、人気の秘密は?

こんにちは、スイーツジャーナリストの平岩理緒です。日本全国の菓子店より、スイーツで地域を盛り上げる様々な取り組みをご紹介するこちらのコラム。前回の奈良に続き、鹿児島県から第二弾をお届けします。

「パティスリー ヤナギムラ」さんは、1998年創業。鹿児島市内の武岡本店の他、市内と鹿児島県内に路面店があり、鹿児島中央駅・イオンモール鹿児島店内の店舗と合わせて、現在は5軒を経営されています。



万人に愛される洋菓子を提案、地元素材も積極的に使用

柳村豊仁(やなぎむら・とよひと)シェフは、関西を拠点に全国の百貨店に複数のパティスリーブランドを出店する大手洋菓子メーカーで修業し、副工場長を務めた後、故郷の鹿児島県に戻られ、自店をオープンされました。

そんなご経歴もあって、世代を越えて万人に愛されるファミリー層向きの「洋菓子」を作り続けて約20年。いまや鹿児島県を代表する人気店として、バレンタイン時期などには、首都圏をはじめ各地の百貨店催事に出店されることも。その中でも、地元の素材を使ったお菓子を積極的に販売されています。

特に柳村シェフが力を入れているのが、鹿児島県産のお茶を使った焼菓子商品です。鹿児島県のお茶栽培は、静岡県に次ぐ日本第二位の出荷量を誇り、土地も広く大規模な機械化も進んでいて、将来性も期待されているそうです。

ロングセラー人気の「ヤナギムラの知覧茶サブレ」は、鹿児島県の代表的な銘柄である「さつまほまれ」というお茶を使用。知覧は、薩摩半島の南部中央に位置する鹿児島県南九州市内にある地域で、日本有数のお茶の栽培地として知られています。サクサクとした食感のサブレには、お茶の葉のイメージで風味だけではなく色の鮮やかさも求め、たっぷりの煎茶と少量の抹茶とを練り込んでいるそうです。

ヤナギムラの知覧茶サブレ 12枚入り 540円、24枚入り 1,080円、48枚入り 2,160円(全て税込み)
 

その後、柳村シェフが新たに開発し、最近、人気急上昇中のサブレが「茶畑いっぽん」。

こちらには、柳村シェフのお父様のご実家という地縁もあった、奥霧島産のお茶を使用。霧島は、地名のとおり、寒暖の差が大きく霧が生じやすい山麓の一帯で、それが高品質なお茶となる秘密だといわれています。

ヤナギムラでは、その中でも120年以上の歴史を持つ茶園のお茶を使っているそう。「抹茶は苦みが特徴と思っていたけれども、光を受けていない茶葉の甘みに驚いた」という柳村シェフ。

サブレの形は、整然とお茶の木が並んだ茶畑をモチーフに、その畑を「一本」買ってもらうようなイメージからだそう。

茶畑いっぽん 5枚入り 864円、9枚入り 1,296円、18枚入り 2,592円(全て税込み)



売り方、見せ方も工夫して、地産地消のお菓子をPR

鹿児島中央駅の店舗は、7年目を迎えた2016年に九州新幹線の利用客増加も見込んでリニューアルし、生菓子を置くのを止め、お土産菓子の販売に特化した店舗に改装。それを機に、メインとなるショーケースで、「茶畑いっぽん」を核としたディスプレイを展開しています。

パティスリー ヤナギムラ 鹿児島中央駅店の外観   

 

茶畑の写真を背景として、「茶畑いっぽん」をずらりと並べた印象的な見せ方。まるで中に茶畑が広がっているかのような、斬新なイメージです。

実際に、このディスプレイにしてから「茶畑いっぽん」の売れ行きは、非常によく伸びているとのこと。


パティスリー ヤナギムラ 鹿児島中央駅店ショーケースのディスプレイ

 

脇のコーナーには、鹿児島県を代表する産品・さつまいもを使った代表商品「薩摩チョコチップス」、「薩摩チョコンピ」、「薩摩いいもん」が並びます。「薩摩チョコチップス」は、鹿児島県の芋焼酎にも使用される鹿児島県産のさつまいも「黄金千貫(こがねせんがん)」をパリパリのチップスにして、カカオ分52%の甘すぎずビターなミルクチョコレートをコーティングしたもの。平成21年度の「鹿児島県新加工食品コンクール」さつまいも加工食品部門でも最優秀賞を受賞した、ヤナギムラの看板商品です。

「薩摩チョコンピ」は、昔懐かしい「芋ケンピ」のイメージで、「黄金千貫」をカリカリのスティックにして、同じくカカオ分52%のチョコレートでコーティングしています。

薩摩チョコチップス 130g入り 648円(税込み)、薩摩チョコンピ 130g入り 648円(税込み)
 

 

「薩摩いいもん」は、チョコがけにしていない「黄金千貫」の薄切りチップスで、プレーン以外に鹿児島県産天然塩をまぶしたものや、色鮮やかな「種子島紫」を使ったもの、さらに胡麻・レモン・コーヒー・ラズベリー・シナモン・エダムチーズなど、様々な味のバリエーションがあります。

実は、2016年の秋、台風16号により材料を仕入れている工場が被災してしまい、芋素材が入荷できなくなったことで、これらのさつまいも商品を一時的に販売・製造できなくなる事態も起きたそう。時にはこのような天災も起きますし、農産物は天候などによって出来具合も左右され、原材料が入手できないといったこともあり得ます。

安定して商品を提供するということは、もちろんとても大切ですが、そのような不測の事態にあっては、お客様にしっかりと伝えて理解していただく必要があります。ヤナギムラでも、ホームページや店頭でお知らせをするなどして対応に務め、2017年の1月には原材料の供給ルートを確保し、販売を再開させることができたそうです。
薩摩いいもん 480円~486円(税込み)

 

また、ヤナギムラの人気商品の一つに「薩摩蔵 焼酎ボンボンショコラ」シリーズがあり、鹿児島中央駅店でも販売されています。

これは、鹿児島県内の厳選酒蔵とのコラボで作った、リキュールボンボンの焼酎版のようなボンボンショコラ。 口の中でとろっと溢れ出す焼酎とチョコレートのまろやかな口どけが特徴で、バレンタインシーズンを中心に冬場の売れ筋商品となっています。

包み紙にも、それぞれの焼酎のラベル柄を採用していて、そのマニアックさがお酒好きの方にも好評です。20個入り、30個入りともなると、様々な焼酎銘柄のボンボンショコラがずらりと並ぶ様子が迫力大!

薩摩蔵 焼酎ボンボンショコラ 1粒216円、4個入り 1188円~40個入り 11,880円(全て税込み)

 

 

豊かな鹿児島県産の素材を活かした菓子作り

これ以外にもヤナギムラには、鹿児島県産の素材を使ったお菓子が色々とあります。

最近、開発して、これからしっかりと販売していきたいと考えているのが「霧島みるくチーズケーキ」。霧島市産の牛乳をたっぷり使い、しっとりベイクドとレアの二層仕立てのチーズケーキの表面をクラムで覆った、三層仕立ての口どけ滑らかなチーズケーキです。

本物のチーズ用の経木製パッケージを模したような円筒形の容器や、牛の白黒まだら模様を採り入れたデザインも目を引きます。

 

霧島市産の牛乳を使ったお菓子には、他に「やわらか霧島プディング」もあり、「霧島みるくチーズケーキ」のどちらかを購入すると、オリジナルの白黒まだら模様の袋に入れてくれるそうです。「霧島」ブランドの価値を高め、認知を広める戦略の一つですね。

霧島みるくチーズケーキ 150g 864円、280g 1,296円(全て税込み)

 

霧島みるくチーズケーキ と やわらか霧島プディング 専用の袋

 

これまで紹介してきたお菓子は全て通販もされていますが、「薩摩もんぶらん」は、今のところ通販はしておらず、店頭で冷凍状態での販売のみとなっています。

鹿児島県のさつまいものクリームとマロンのクリームをスポンジでサンドした、層状の四角い「モンブラン」です。食べやすいよう、あらかじめ9つにカットした切れ目が入っており、「へら」が添えられていて、それで取り分けやすいようになっています。浮島の和菓子のような仕上げに合わせ、パッケージも「和」のイメージで統一されています。

 

薩摩もんぶらん 963円(税込み)

 

「桜島フィナンシェ」は、桜島特産の柑橘類で、世界最小といわれる「小みかん」を使用していて、ふんわりと柑橘の爽やかな香りが広がります。もともと地元の道の駅のご婦人達が作っていたお菓子を参考に考案したそうで、今でも、地元農家の女性達に手作業ですり下ろしてもらった小みかんの皮を使っているそうです。

農家にとって、農産物をそのまま出荷するだけではなく加工品として販売するということは、収益増にもつながります。地元で栽培されたものを使うというだけでなく、地元で一次加工された素材を使うという意識を持つことで、地元企業の雇用創出や一次産業の活性化にも繋がっていくことでしょう。

桜島フィナンシェ 1個162円、7個入り 1,188円、14個入り 2,376円、21個入り 3,564円(全て税込み)

 

「鹿児島県には沢山の素材がありますが、鹿児島県だから特別なのではなく、いい素材はどこにでもあります。自分の両親の実家、さらに奥さんや旦那さんの実家と、ゆかりの地が4か所もあったら、各地で色々と探すことができますね」と柳村シェフ。

鹿児島で長年愛されてきた人気店の取り組みは、自分の地元を見つめて、どんなものを使えるか、何ができるかを考えるうえで、大いに勉強になりそうです。

(取材・文:スイーツジャーナリスト 平岩理緒)

 

パティスリー ヤナギムラ 武岡本店の外観 
 

店名 パティスリー ヤナギムラ 武岡本店
住所 鹿児島県鹿児島市武岡1-19-3
電話 099-283-0382
FAX 099-283-0396
最寄駅 JR九州 鹿児島中央駅
目印 JR鹿児島中央駅から市営バス明和県営住宅前行きで10分、
武岡小前下車すぐ
営業時間 10:00 – 20:00
定休日 水曜日(不定休あり)
駐車場 あり 
イートイン なし
クレジットカード 不可
お取り寄せ 一部可(ホームページのオンラインショップ)
ホームページ、ブログ等

http://www.yanagimura.com/

パティスリー ヤナギムラ Facebookページ

 





※「平岩理緒 季節のまちおやつ便り」は、本コーナーおよび、おやつマップ(エリア別)検索の双方で見つかるように、同じ記事で検索用タグを変更し、2記事(同じもの)HP上に公開しています。

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