「生産者が私には計ることの出来ないような努力をして美味しい素材を作ってくださるからこそ、何十年もお客様に選び続けていただけるようなお菓子の味が出来るんです」

エルベラン オーナーシェフ 柿田 衛二(かきた えいじ)さん



夏真っ盛りのある日、夙川駅(しゅくがわえき)から数分歩くと見えてきたのは外国を思わせるような美しく涼しげなガーデンテラスです。テラスの先にあるのは大きなガラス窓、そのガラス窓からのぞくと色とりどりのケーキやクッキーが並んでいます。今回取材したのは「洋菓子をファッションから文化へ」というコンセプトを掲げる洋菓子店「エルベラン」です。店内に入るとまず聞こえるのは「いらっしゃいませ」という大きな声です。販売を担当するスタッフの他、ガラスの向こう側にある厨房からも大きな声が聞こえます。「世界一良い挨拶を目指しています」とおっしゃるのはオーナーシェフの柿田 衛二(かきた えいじ)さんです。



『美味しい食事は美味しい素材の味で決まる』

今日は木漏れ日が気持ちの良いテラスのグリーンカーテンの下で美味しいケーキを頂きながらお話を伺いました。「先代がこの店を開店してから54年になります。開店当初からずっと素材にはこだわっています」。エルベランでは先代から続く強いこだわりがあります。それは良いもの、美味しいものを使うということと、食品添加物は使わないということです。「先代の父から、そして母から教えてもらった『美味しい食事は美味しい素材の味で決まる』という事が今の私のお菓子作りの土台になっています。いい素材はそのものの味を生かすのが一番美味しい食べ方という考えです」このように幼い頃から良い素材の美味しさはそれだけでご馳走になるという事を知っていた柿田シェフは洋菓子も同じことだと考えています。



洋菓子をファッションから文化へ

「うちには開店当時から今まで、変わらずに作り続けているケーキが10種類以上あります。先代が考えて作り始めたケーキを今は私が作っています。このずっと作り続けているケーキ一つひとつがお客様の思い出になっていると思うんです」と柿田シェフは話します。ひぃおばあちゃんが昔食べたこのケーキの思い出を話しながら今はひ孫と一緒に食べる、そしてそれがまた思い出になるというような代々記憶に受け継がれている思い出のケーキを作っていきたいと思っているとのことです。「きちんと地域に根差している洋菓子店でありたいです。この夙川という町にこのお菓子があるという事がお客様にとって当たり前だと思っていただきたいんです。それが『お菓子が文化である』という事だと思います」と柿田シェフ。



エルベランの素材選び

「生まれてからずっとこの夙川という町で暮らしています。なので地元の農家の方と縁があって今年から兵庫県産の小麦粉を使っています。その他の素材も農家さんが大切に育てていることを知って、食べてみておいしいと思ったものを厳選しています」と柿田シェフ。例えばエルベランで使用している生クリームは美味しさに関係する数値の成績が全国でもトップクラスの良質乳から作られたクリームです。柿田シェフはこのおいしい生クリームをつくる為に酪農家さんがどれほどの苦労をしているかは計り知れないといいます。だから作った方達の努力を知って感じた感動を洋菓子にしてお客様に伝えていくのが使命だと思っているんだそうです。「生産者がこうしてたくさんの努力をして美味しい素材を作ってくださるからこそ、何十年もお客様に選び続けて頂けるようなお菓子の味が出来るんです」と柿田シェフ。果物、卵、チーズ、はちみつ、その他たくさんの素材も同様に生産者の努力で作られた美味しい素材を厳選してお客様にお届けしています。

 

 

「お取り寄せ」の先駆け!

エルベランはケーキとクッキーが主役のお店です。まずは先代が40年前に考え出したこちらのクッキーをご紹介します。「3か月ほど前から兵庫県産の小麦粉を使っています。先代が考えたお菓子は基本の配合は変えませんが時代に合わせて少しずつ材料を変えたりしながらブラッシュアップしています」と柿田シェフ。低水分バターを使って作ったクッキーでサクサクとした食感と優しい甘み、そして小麦粉の香ばしさと豊かなバターの香りがベストマッチです。柿田シェフがこのクッキー誕生のエピソードを話してくれました。「このクッキーを発売した1980年代に宅急便が全国発送を始めたんです。そこで先代が『これからはうちのお菓子を全国へ手軽に発送してお客様に食べていただける時代が来る!』と考え作り始めたんです」。これには驚きました。現在当たり前のように行われている「お取り寄せ」ですね。個包装で食べやすく、ついつい食べてしまうようなサイズ感というところまで考え抜かれて作り出されたクッキーは現在でも全国からお取り寄せの注文が入る人気商品です。



左 ティーブレンド(チョコなし)

サブレ、チョコレートサブレ、アーモンドパイ、チーズとトマト、お茶と黒豆、ハニーパイ、豆乳とおから、
黒糖とコーヒー 各1個 50円(税抜き)

右 エルベランクッキー(チョコサンド)
ホワイトチョコ、ミルクチョコ各1個 60円(税抜き)




見た目の美しさはショーケースを華やかに!

柿田シェフが商品を考える時にこだわること大切にしていることは「二つ、三つと食べられるお菓子作り」です。まさにその通り!と感じたケーキをご紹介します。「オペラモヒート」です。こちらは定番商品である「カシスとライチティーのオペラ」の夏限定アレンジです。低水分バターの食感を感じてもらう為に作りました。バタークリームとスポンジがきれいに層になっています。濃厚なイメージのあるバタークリームですが、オペラモヒートのバタークリームはムースのようにさっぱりといただけます。「通常オペラってグラサージュ(菓子の表面にチョコレートやソースなどを流しかけてコーティングする調理法)で黒いんですが、夏だから華やかにして更にラムを使っているのでミントと合わせてモヒートにしました」とシェフが教えてくれた通り見た目の彩と、ミントとフルーツの爽やかな味は夏ピッタリです。一つではなく、二つ、三つと食べたくなるケーキです。



ムースリーヌを味わってください

「オペラモヒート」が低水分バターの食感を味わっていただくケーキなら、こちらは低水分バターの味や香りを味わっていただきたい「低水分バターのシュークリーム」です。しっかり焼かれた固めの皮の中にはムースリーヌ(カスタードクリームとバターを合わせたクリームのこと)がたっぷりと詰められています。「皮をしっかり焼くことでよく噛んでもらえます。そうすると口の中の体温でクリームが溶けてバターの香りが引き立ちます」と柿田シェフ。一口でバターの香りが際立つムースリーヌの虜になりました。



左 オペラモヒート1個 500円(税抜き)夏季限定、
右 低水分バターのシュークリーム1個 330円(税抜き)



優しい酸味の「レモンパイ」

開店初期からあり54年間にわたって人気のお菓子です。昔からある酸っぱいレモンパイは日本人の舌には合わないのではないかと先代が考えて酸味控えめの味に仕上がっています。国産レモンと天然水で炊き上げたレモンカスタードをエルベラン特製のパイでサンドして生クリームで仕上げてあります。優しい酸味と甘みのバランスがちょうど良く口に広がる、子供からお年寄りまで皆さんにお勧めしたい味でした。



ふわっととろっと「シャンティーシトロン」

こちらも開店当時からある定番の商品です。フランス語でシャンティーとはホイップしたクリームの意味、そしてシトロンはレモンという意味です。優しい黄色の見た目の通り優しい酸味と甘みのレモンクリーム、そしてふわふわのスポンジケーキとホイップしたクリームが口の中で一つになって美味しさを奏でます。初めて頂きましたが懐かしさを感じるようなとっても美味しいケーキでした。



右 レモンパイ 1個 350円(税抜き)  左 シャンティーシトロン1個 350円(税抜き)




お友達が管理して熟した絶品バナナ

「ショーケースを眺めるお客様から『本物のバナナの皮を使っているんだね』と言われたことがあるんですよ」と柿田シェフが笑いながら紹介してくれたのは「バナナなエクレール」です。形も色も本当にバナナにそっくりです。こちらのケーキは柿田シェフのご友人が営む青果店で丁寧に熟成された完熟バナナを使っています。香ばしい皮にとろっとしたカスタード、そしてたっぷりと挟んであるバナナ。バナナ好きにはたまらないひと品です。



バナナなエクレール1個 350円(税抜き)




スタッフとのコミュニケーション

昨今、洋菓子業界だけでなく飲食業界全体で問題となっていることの一つに人手不足問題があります。これについて柿田シェフに伺いました。「おかげさまで今は人手不足の問題には直面していません。若いパティシエに仕事の良さを知ってもらえるように工夫しています」と柿田シェフ。例えば年に二回行われる社内コンテストの「エルベラン杯」。製造の9名が3チームに分かれ3時間で商品を仕上げるのだそうです。「知り合いのシェフに来ていただき、作業工程から見た目、味の審査をして優勝を決めます」優勝したチームには次の新作を考えるチャンスがもらえるのだそうです。「新入社員と先輩パティシエのコミュニケーションやチームワークが育まれていると思います。モチベーションも上がりますよね」と柿田シェフ。その他にも新入社員にはケーキを作れるようになるまでの年数の目安を設定してあげるのだとか。昔では考えられないかもしれませんが時代が変わってきていることに加え、技術も進んできているので柔軟に対応しているのだそうです。



今後のエルベラン

「うちは支店も特設出店もしないって決めています。味にぶれが出てしまうのを避けるためです。それにお店を一つやるって大変なことなんです。私はこのテラスの植物も装飾も、店内の装飾も全て自分でやっているんです。こういうことも店舗を増やすと出来なくなりますから。お客様にエルベランに来て非日常的なひと時を感じていただきたいのでこれには力を入れています」と柿田シェフ。初めにエルベランを見たときに印象的だった素敵なこの装飾と外国のような空間は全て柿田シェフの手作りだというから驚きです。自ら雑貨店などに出向きインスピレーションで決めるのだそうです。そしてこんなお話もしてくれました。「父の代からずっと夙川にお店を構えています。今までこうしてやってこれたのは夙川の皆さんのおかげなので今後は夙川に恩返しができるお店にしたいです。エルベランのお菓子を知ってくださった色々なお客様に夙川という町の良さを知っていただけたらと思っています。そしてエルベランから見た夙川の良さを全国に発信したいと思っています」。皆さんもエルベランがある夙川に訪れてみませんか?


 


(取材・文 まちおやつプロジェクトメンバー)
 

 

店名 ELBERUN(エルベラン)
住所 兵庫県西宮市相生町7-12
電話 0120-440-380、 0798-74-4349
最寄駅 阪急電鉄神戸本線、甲陽線 夙川駅
営業時間 9:00~18:00
定休日 毎週火曜日(毎週水曜日はクッキーのみの販売となります)
駐車場 なし
イートイン あり 12席
お取り寄せ http://www2.enekoshop.jp/shop/elberun/
ホームページ https://elberun.gift/
https://www.facebook.com/elberun/

 

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